2012年11月9日

ぶん殴る前に10まで数えよう

「ぶん殴る前に10まで数えよう」っていったい何だ。
10まで数えてからぶん殴るのではない。
10まで数えたらぶん殴る気が失せるというのだ。

最近はサンパウロ市が物騒で、毎晩のように10人単位の殺人事件が報道されている。

ブラジルの殺人事件の大半は薬物がらみといわれる。
つまり、麻薬販売人グループ内のいざこざ、ライバルグループ間の勢力拡張抗争、薬物売買場面での争い、代金不払いの清算(凄惨?)といったものだ。

その上に、ブラジルの大都市のファベーラ(favela)がある。
ファベーラに巣食う犯罪組織から、政府が支配権を奪回するため警察力さらには軍隊力を行使するので、強迫された犯罪組織が反発して、非番の警察官を殺害する事件がサンパウロで連発している。

つい昨日サンパウロ州政府と連邦政府の間、つまりサンパウロ州警察と連邦警察が、凶悪犯罪対策のためにより緊密な協力体制を結成したというニュースが流れたばかりだ。

一方で、街角で普通の市民の間に起きる喧嘩が発展したような、感情爆発による衝動的殺人事件も頻発している。

ブラジルの全国の殺人事件の4件に1件は、衝動(impulso)により、つまらないきっかけ(motivo fútil)で起きる。
暴力に訴える者は、感情の制御ができなくて何も考えず衝動のおもむくまま突っ走る。

そのため、あるキャンペーンが今日発表された。
「10まで数えよう。深呼吸して10まで数えよう。」
頭に血がのぼって即座に暴力へ訴える前に、深呼吸して冷静に10まで数を数えて頭を冷やそうというのだ。

パラ州ベレンでおきた傷害事件では、オートバイのアラームが原因でライダーと交通警察官が口論していたが、警察官が落ちていた板切れでライダーを殴り始めて、通行人が仲裁するまで喧嘩は続いた。

ブラジリアから30kmのセイランジアでは、隣人同士の口論が40歳のモトボーイ、つまりオートバイの配達屋が命を失う殺人事件まで達した。
隣からのオーディオの音量が大きすぎ耳障りだったという些細な原因なのだが、モトボーイは怒った隣人に弾丸5発を撃ち込まれて死亡した。

この日の報道ではないが、今まで聞いた中で最もくだらない理由で殺人が起きたと思うのは、若者の兄弟げんかが激昂して相手を刺し殺したという地元の事件だ。
一つ屋根の下に住む兄弟が殺人事件の犯人と被害者になってしまったのは、テレビを部屋のどこへ置くかでもめたからであった。
全く情けなくなる。

連邦区の全殺人事件の23%は衝動的に起きたという。
サンパウロ州の2011年1月から2012年9末までの統計では、実に83%が些細な(motivo banal)理由で殺人事件にまでなった。
公共省の統計では、ブラジルの全殺人事件の4件に1件は衝動的に起きるという。

衝動に我を忘れて暴力へ突っ走るという危ない行動は全国的に見られるわけだが、そのために「10まで数えよう」キャンペーンが今日ブラジリアで発表されたのだ。

MMAと柔道の格闘技家たちが出演しているビデオを見た。
格闘は畳の上だけにしようとのメッセージである。

"Conte até dez. A raiva passa e a vida fica."
「10まで数えよう。怒りは過ぎ去り、命は残る。」

キャンペーンコーディネーターTaís Ferrazさんは語る。
「ブラジル人はもっと寛容と平和(tolerância e paz)を大切にしなければならない。ブラジルの殺人率を激変しなければ。ブラジルは世界でも有数の暴力事件の多い国だから。」

キャンペーンは期限を定めず、主に学校でビデオやパンフレットを使い、教育省と協力して行われる。

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